1の16乗根が作る累巡回拡大体を図示する

目次

ℚ(ζ)/ℚとその拡大次数

前提条件を繰り返しておきます。

x16-1=0 の解は ζ = cos(360˚/16)+isin(360˚/16) として、1,ζ,ζ23,…,ζ15の16個です。

ζのℚ上の最小多項式は16次の円分多項式、Φ16(x)=O で、その根は ζ,ζ3579,…,ζ15 と2の倍数を除いたもので8個です。

ガロア群Gal(ℚ(ζ)/ℚ)の元は、ℚ(ζ)のζiを別のζjに対応付ける写像のうち、1の原始16乗根に移すものになります。

その元を、

σi(ζ)=ζi (i=1,3,5,7,…,15)

とします。σ1は恒等変換です。

ℚ(ζ)/ℚの拡大次数8、ガロア群Gal(ℚ(ζ)/ℚ)の位数も8です。

ℚ(ζ)/ℚ(ζ^4)の自己同型写像の図示法を工夫する

前にσ5の作用を図示しました。

これをプログラムで作成できるように、次のように書き換えてみます。上下の対応を確認してください。

表の各セルを各ζiに対応させて、その指数だけを書くことにします。

最後の1行がℚ(ζ4), あるいはℚの範囲です。

上部3行はℚ(ζ)ですが、偶数乗は奇数乗と異なる変換のされ方をするので分けてあります。

こうしておくと固定される部分の ℚ(ζ4)/ℚの自己同型写像を縦に書くことができます。

この変換は ℚ(ζ4) の範囲だけでいいような気もしますが、ℚ(ζ) 全体でもうまく回ってるので表示しています。

この表を作成したプログラムは、「mod 16」で紹介しています。タイトルやメニューはまだ仮です。

・<σ5>と<σ7>による2段階の累巡回の図示

まず、<σ5>と<σ7>で考えます。

Gal(ℚ(ζ)/ℚ(ζ4)) = <σ5> = {e, σ5, σ9, σ13}
Gal(ℚ(ζ4)/ℚ) = <σ7> = {e,σ7}

σ5を複数回作用させると4回目にもとに戻ります。

2回作用させるとσ9、3回作用させるとσ13、4回作用させるとσ1=e と同等であることもわかります。

1357
9111315
261014
4128

σ5

51593
137111
101426
4128

σ5

9111315
1357
261014
4128

σ5

137111
51593
101426
4128

σ5

1357
9111315
261014
4128

⇩ σ7 を作用させると、固定体であった部分が変換されます。

そこから σ5を複数回作用させると別の経路で巡回し、4回目にもとに戻ります。

7531
1513119
141062
1248

σ5

39155
111713
621410
1248

σ5

1513119
7531
141062
1248

σ5

111713
39155
621410
1248

σ5

7531
1513119
141062
1248

⇩ σ7 さらに作用させると、もとに戻ります。

1357
9111315
261014
4128

これで、σi(ζ)=ζi (i=1,3,5,7,…,15) の写像の全部が出現しています(表の1-1のセルでわかります)。

・立体図にしてみる

巡回のイメージをつかむために、このように見てください。第一層(上の層)では1-5-9-13しか回りませんが、σ7によって1が第二層に降りると7-3-11-15と回って全部の写像が出てきます。1-7だけでなく、5-3など上下に並んでいるものはどれもσ7で相互に変換されます。

・<σ5>と<σ15>による2段階の累巡回の図示

2つ目、<σ5>と<σ15>で考えます。

Gal(ℚ(ζ)/ℚ(ζ4)) = <σ5> = {e, σ5, σ9, σ13}
Gal(ℚ(ζ4)/ℚ) = <σ15> = {e,σ15}
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9111315
261014
4128

σ5

51593
137111
101426
4128

σ5

9111315
1357
261014
4128

σ5

137111
51593
101426
4128

σ5

1357
9111315
261014
4128

⇩ σ15 を作用させると、固定体であった部分が変換されます。

そこから σ5を複数回作用させると別の経路で巡回し、4回目にもとに戻ります。

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7531
141062
1248

σ5

111713
39155
621410
1248

σ5

7531
1513119
141062
1248

σ5

39155
111713
621410
1248

σ5

1513119
7531
141062
1248

σ15 をさらに作用させると、もとに戻ります。

・<σ13>と<σ7>による2段階の累巡回の図示

3つ目、<σ13>と<σ7>で考えます。

Gal(ℚ(ζ)/ℚ(ζ4)) = <σ13> = {e, σ13, σ9, σ5}
Gal(ℚ(ζ4)/ℚ) = <σ7> = {e,σ7}
1357
9111315
261014
4128

σ13

137111
51593
101426
4128

σ13

9111315
1357
261014
4128

σ13

51593
137111
101426
4128

σ13

1357
9111315
261014
4128

⇩ σ7 を作用させると、固定体であった部分が変換されます。

そこから σ13を複数回作用させると別の経路で巡回し、4回目にもとに戻ります。

7531
1513119
141062
1248

σ13

111713
39155
621410
1248

σ13

1513119
7531
141062
1248

σ13

39155
111713
621410
1248

σ13

7531
1513119
141062
1248

σ7 をさらに作用させると、もとに戻ります。

・<σ13>と<σ15>による2段階の累巡回の図示

4つ目、<σ13>と<σ15>で考えます。

Gal(ℚ(ζ)/ℚ(ζ4)) = <σ13> = {e, σ13, σ9, σ5}
Gal(ℚ(ζ4)/ℚ) = <σ15> = {e,σ15}
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9111315
261014
4128

σ13

137111
51593
101426
4128

σ13

9111315
1357
261014
4128

σ13

51593
137111
101426
4128

σ13

1357
9111315
261014
4128

⇩ σ15 を作用させると、固定体であった部分が変換されます。

そこから σ13を複数回作用させると別の経路で巡回し、4回目にもとに戻ります。

1513119
7531
141062
1248

σ13

39155
111713
621410
1248

σ13

7531
1513119
141062
1248

σ13

111713
39155
621410
1248

σ13

1513119
7531
141062
1248

σ15 をさらに作用させると、もとに戻ります。

・Gal(ℚ(ζ)/ℚ(ζ^4))とGal(ℚ(ζ^4)/ℚ)のまとめ

4つ目、<σ13>と<σ15>で考えます。

Gal(ℚ(ζ)/ℚ(ζ4)) は、<σ5> または <σ13>。 この2つは位数4で逆回り。

Gal(ℚ(ζ4)/ℚ) は、<σ7> または <σ15>。 この2つは位数2で、ℚ(ζ4)に対する効果は同等。

ℚ(ζ)とℚ(ζ^4)の間にℚ(ζ^2)を加えて3段階の巡回を考える

これはうまく行っているのか自信はありません。

σ9がζの偶数乗を固定することから、試してみます。

3段階になります。2段階に比べてℚ(ζ2)の部分が増えています。

・<σ9>と<σ3>による巡回の図示

Gal(ℚ(ζ)/ℚ(ζ2)) は、<σ9> で位数2の巡回をします。

1357
9111315
261014
4128

σ9

9111315
1357
261014
4128

σ9

1357
9111315
261014
4128

⇩ σ5 を作用させると、固定体であった部分が変換されます。

そこから σ9を作用させると、ℚ(ζ2)の外側は、別の経路で巡回し、2回目にもとに戻ります。

51593
137111
101426
4128

σ9

137111
51593
101426
4128

σ9

51593
137111
101426
4128

⇩ σ5 をさらに作用させると、ℚ(ζ2)の部分がもとに戻ります。ところが、ℚ(ζ2)の外側はもとには戻らず先に進みます。上のℚ(ζ4)/ℚの時にはこの部分ももとに戻りました。

9111315
1357
261014
4128

σ9

1357
9111315
261014
4128

σ9

9111315
1357
261014
4128

⇩ σ5 をさらに作用させると、ℚ(ζ2)の部分は2回目の巡回を始めます。ℚ(ζ2)の外側はさらに進んで行きますが、これが巡回の最後です。つまりℚ(ζ2)の外側は位数4で巡回します。

137111
51593
101426
4128

σ9

51593
137111
101426
4128

σ9

137111
51593
101426
4128

⇩ σ5 をさらに作用させると、ℚ(ζ2)の外側の部分ももとに戻りますが、全体を眺めるとσ9を施した列と合わせて2度づつ同じものが出てきてしまいます。

・<σ9>と<σ5>と<σ3>による3段階の累巡回の図示

Gal(ℚ(ζ4)/ℚ) は、<σ3> で位数2の巡回をします。

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9111315
261014
4128

σ9

9111315
1357
261014
4128

⇩ σ5

51593
137111
101426
4128

σ9

137111
51593
101426
4128

⇩ σ3

39155
111713
621410
1248

σ9

111713
39155
621410
1248

⇩ σ5

1513119
7531
141062
1248

σ9

7531
1513119
141062
1248

上の立体図に似ていますが、σ9とσ5の部分が、上の立体図に相当します。