1の15乗根が作る拡大体

目次

ℚ(ζ)とその拡大次数

x15-1=0 の解は ζ = cos24˚+isin24˚ として、1,ζ,ζ23,…,ζ14の15個です。

x15-1=0 の最小分解体はℚ(ζ,ζ23,…,ζ14)=ℚ(ζ)です。

拡大次数を調べるために、ζのℚ上の最小多項式を求めます。

15次の円分多項式は

Φ15(x)=(x15-1)(x-1)/(x5-1)/(x3-1)

これは原始15乗根だけが解になる式を求めたことになります。

ℚ(ζ)のζiを別のζjに対応付ける写像のうち、有理数にしてしまうことのある写像を排除するためのようです。

具体的に計算してみます。ここでも、

σi(ζ)=ζi (i=1,2,3,…,14)

とします。σiは恒等変換です。

同時に、5乗根の時と同様に、同型写像の条件を満たすようにζ1以外の移り先の組み合わせも確認します。

ζi の移り先
σ1σ2σ3σ4σ5σ6σ7σ8σ9σ10σ11σ12σ13σ14
ζ11234567891011121314
ζ22468101214135791113
ζ336912036912036912
ζ44812159132610143711
ζ55100510051005100510
ζ661239061239061239
ζ77146135124113102918
ζ88192103114125136147
ζ993126093126093126
ζ101050105010501050105
ζ111173141062139511284
ζ1212963012963012963
ζ131311975311412108642
ζ141413121110987654321

上の表のうち、 0 という所が有理数(1)になります。

14あるσのうち、3の倍数である3,6,9,12、5の倍数である5,10が自己同型な変換にならないということです。

ということなので、

σi(ζ)=ζi (i=1,2,3,…,14)

の中で同型写像になるものは、

σi(ζ)=ζi (i=1,2,4,7,8,11,13,14)

となります。

8つの自己同型写像による変換の表

8つの自己同型写像の移り先をまとめます。

同型写像にσ3はありませんが、ℚ(ζ)の中にζ3はあります。これもℚに含まれない数に移らなくてはなりません。

ζi の移り先 (自己同型のみ)
σ1σ2σ4σ7σ8σ11σ13σ14
ζ1 12478111314
ζ2 24814171113
ζ3 3612693912
ζ4 48113214711
ζ5 510551010510
ζ6 6129123639
ζ7 71413411218
ζ8 81211413147
ζ9 9363129126
ζ10 105101055105
ζ11 11714213184
ζ12 1293961263
ζ13 13117114842
ζ14 14131187421

巡回群になっているか(σ2)

さらに σ1 〜 σ14 が巡回群になっているかを調べます。より正確に書くと、どれを生成元とすれば巡回群になるかということです。

まずはσ2を繰り返し作用させた表です。

巡回するかの確認 (σ2のみ)
σi ζk σi1 σi2 σi3 σi4
σ212481
71413117
361293
5105105

ζkは初期値です。K=1から始めると、4回で1に戻ります。1からの巡回で出てこない7を初期値にすると別の値をとってやはり4回で戻ります。さらに出てこない3を初期値にするとまた別の経路で4回で戻ります。さらに出てこない5で始めると今度は2回で戻ります。

ζの移り先の指数がσの添字と決めたので、2,4,8,1はσの巡回でもあります。

全体を巡回することはありませんが、自己同型な写像群にはなっているようです。

巡回群になっているか(σ4)

σ4を繰り返し作用させた表です。

巡回の確認 (σ4のみ)
σi ζk σi1 σi2
σ4141
282
3123
555
696
7137
101010
111411

K=5と10が変化せず、その他は2回で戻ります。

巡回群になっているか(その他)

どれを生成元とすれば巡回群になるかを調べています。σ24と調べてきましたので、残りの 7,8,11,13,14です。

巡回するかの確認 (σ7のみ)
σi ζk σi1 σi2 σi3 σi4
σ7174131
2148112
361293
55555
1010101010
巡回するかの確認 (σ8のみ)
σi ζk σi1 σi2 σi3 σi4
σ818421
71113147
391263
5105105
巡回の確認 (σ11のみ)
σi ζk σi1 σi2
σ111111
272
333
4144
5105
666
8138
999
121212
巡回するかの確認 (σ13のみ)
σi ζk σi1 σi2 σi3 σi4
σ13113471
2118142
391263
55555
1010101010
巡回の確認 (σ14のみ)
σi ζk σi1 σi2
σ141141
2132
3123
4114
5105
696
787

ℚ(ζ)/ℚのガロア群は巡回群でない

Gal(ℚ(ζ)/ℚ)={σ12478 σ111314} です。

全体をひとつの巡回群で書くことはできません。

この後、書籍Iのテキストでは、定理6.3でℚ(ζ)/ℚは累巡回拡大であることを主張します。

論法としては、Gal(ℚ(ζ)/ℚ)≅(Z/15Z)* であることが確かめられた。(Z/nZ)*は巡回群の直積に同型で、巡回群の直積は可解群なので、ℚ(ζ)/ℚは累巡回拡大というものです。

ちょっと足りないと思います。

累巡回拡大は後にx16-1=0 の拡大体で初めて説明されます。