ドラム式プリンタ

初めてコンピュータを学んだ日

初めてコンピュータについて学んだのは1974年ごろ、大学の夏の集中講義でした。理学部の学生対象のコンピュータ概論です。1週間でハードを含む動作原理からプログラムまでを学び、最終日の土曜に初めてコンピュータの設置してある建物に入って学生が作ったプログラムを動かしました。講義は物理学科の教授。普段の講義は資料を持たずにやって来て、広い世界を構築して見せる博学の人でした。

プログラムはFORTRANが1日、COBOLが1日。プログラミングとしては不十分だがコンピュータというものはよくわかりました。当時のことで学生用の機械はありません。機械に触るどころか見るのも最終日だけでした。プログラムを書いて(もちろん紙に)きたら動かしてあげるといわれて、書いてきたのは私を含めて2人だけ。私は講義で習ったsin曲線を文字でグラフ化するプログラムを、減衰振動のグラフにしたものを書きました。もう一人は逆行列を求めるものでした。

ラインプリンタ

当時そこにあったのはHITACというコンピュータだったようですが、ほとんど記憶がありません。私の記憶にあるのはグラフができていくのを見守ったラインプリンタだけです。その動作原理は要するに1行をいっぺんに打とうという巨大なタイプライタです。用紙の幅の円柱(ドラム)に136桁分の英数字を並べたものが紙の向こう側で高速に回転。こちら側からカーボンリボンを挟んで136個の小さなハンマーが並び目的の文字が回ってきた時に打つ。普通の文ならパラパラと音がするけれども、マイナス記号を並べて線を書こうという時には136のハンマーが一斉に動いて大きな音になります。

ドラム式のラインプリンタの概念図ドラム式のラインプリンタの概念図。ハンマーはタイプライタからの想像ですが実際は見えていません。

ドラムの一周に全部の文字が並んでいます。もちろん英数字と若干の記号だけと、文字数が少ないからこそ可能な装置です。

この方式は機械が古くなるとハンマーの動作に若干の狂いが出て、上下に凸凹が目立ってきます。左右は絶対に狂いを生じません。

上下に凸凹というのはこんな感じです。

高さが揃わなくなる

私が数値計算のために使うようになった時にはコンピュータは総入れ替えされていました。プリンタはドラムがベルトになっていました。このベルトは行に沿って高速回転します。ドラムでは文字セットが136必要ですが、ベルトなら1セットで済みます。ずれが生じても左右なので、文字間が多少変化するだけで、あまり目立ちません。優れた方法です。

このころはまだビデオ端末はなく、プログラムミスがあるとラインプリンタにリストが出力され、****で線が引かれてエラーの箇所がわかるようになっていました。同じ文字が続くと、並んだハンマーが観客席のウェーブのように順番に打ち付けられて独特の鋭い音になります。またコンパイラの叱責の声に聞こえたものです。

ベルト式のラインプリンタの概念図

当時の出力が奇跡的に残っていました。プログラムリストの冒頭ですね。そうそう、OKITACでした。

ベルト式プリンタによるプログラムリスト