改めてLineを読んだら「故障している」「ブーと音がする時もある」ということで、故障の状況がつかめません。
今でも、これ以上の情報はありませんが、初めてお答えしたときは、ブーという音からマイナス側の断線を疑いました。
このページにはこのときにLineに紹介した原因究明と修理方法を再録します。
前のページに書いたようにしていただくことで、「修理」ではなく「交換」で解決できれば、それはそれで良いのですが、音は出ているけれどもブーという音はなくならないとか、簡単にできることなら修理もしたいというときに読んでみてください。
雑音が残るという場合、それがどのチャンネルから出ているのかということを確認する必要があります。前ページでは、それが一本マイクであるという仮定で話が始まっています。
しかし、そうとは限りません。体育館のアンプにはマイクの入力が3つあります。一つずつボリュームを下げて雑音がなくなるなら、そのチャンネルが問題だとわかります。ライン入力からも雑音が入る可能性がありますが、まれです。
雑音が発生している入力が一本マイクの入力でない場合、その入力を使っていないという確信があるならボリュームを絞ったままにすれば、とりあえず解決です。使っているのであれば、何が繋がっているか調べる必要があります。
マイクではない不要なコードが繋がっている可能性もあります。壁の標準ジャックとアンプの標準ジャックをつなぐために両方標準プラグ(オス)になっているコードがあります(下図)が、これが壁から外れてアンプの方が刺さったままぶら下がっているような場合です。この場合は不要なら外してしまってください。
前に音響装置を使った人が、何かを使用して元に戻さなかったということはよくあることですし、音が出ないといろいろ繋いでみるという人もいます。
逆に、このようなコードを挿して、刺さっていない方の先端(芯線に繋がっています)に指で触れるとブーという音が大きく入ります。マイナス側がオープンになっているからです。先端とスリーブと言われるマイナス側をショートすればブーという音は止まります。
マイナス側というのは正確ではありません。マイクのコードの内部は次の図のようになっています。
外部からの電磁気的な変化に影響を受けないように芯線を網線で囲んでいて、シールド線と言われているものです。標準プラグでは芯線が先端のチップ(図では赤に着色)に、網線がスリーブ(図では青に着色)に接続されています。
流れている電気信号は波なので、どちらがプラスというわけではないのですが、網線側がアースされていることから、芯線の方をプラスと呼ぶことが多いのです。ホットという言い方もあります。
図のコードはマイクのコードとしては標準的なものですが、雑音防止の観点では最低限です。
繰り返しになりますが、本校の体育館では調光ノイズ排除の必要があってより高度な構造のコードを使用しています。一本マイクのみ調光を使っていない時の簡易連絡用なので、これだけ標準なものにしています。高度な構造のコードについては後で別に図解します。
コードの途中で断線ということはめったにありません。マイクとコード、コードとプラグの接続部分が引張の力や数多くの曲げ伸ばしがあって、切れやすい部分です。図の①、②の部分です。
どちらもアンプが働いている状態で曲げ伸ばしをして、音が切れたり入ったりするときはプラス側、ブーという雑音が入ったり消える場合はマイナス側が切れかかっています。
①部分は、コードがついたままの製品と、外せるような作りになっている場合があります。こちらは②に比べてそれほど傷みませんが、ここが切れると修理は厄介です。外せる場合は片方がキャノンコネクタでもう片方が標準プラグですが、同様なコードがたくさんあるはずですので、交換をおすすめします。
②の部分はモールドといって塩化ビニルなどの軟性のプラスチックで固められている場合が多いのです。この場合内部の銅線と端子の金属の接触不良は起こりませんが、コードの端の部分に力がかかって内部で断線することが多いのです。5〜10cm位を切り捨てて、被覆を剥き、標準プラグの部品を購入して取り付けます。一本マイクは古いものを流用することが多いので、一度この修理をした可能性が高くなっています。その場合はコネクタはネジになっていて中を開けてみることができます。この場合は、ハンダ付け部分が傷んでいることもあるかもしれません。
延長コードは③の部分が特殊です。このコネクタは外すと回路がオープンになります。マイクを繋がない状態で延長コードをアンプに繋いだままにするとブーっと雑音が入り続けます。
外したときにショートするようになっているジャックもありますが、接触不良になりやすいのであえてこの型を選んでいます。内部構造は後述します。この延長コードはパナソニックの製品で、柔らかく床にピッタリ寝そべってくれるので、ステージで足が引っかかることがありません。内部の導線も切れにくくコネクタ内部の構造も単純で故障や接触不良が少ない優れものです。大切にしてください。
両端のコネクタはネジが切ってあって捻じれば開けられます。ハンダづけ部分は切れることがありますので、その場合はコードを10cmぐらい切り詰めてはんだ付けし直します。
④から⑤は壁内の配線で繋がっています。壁のジャックは比較的丈夫ですが、刺さっているコードが横に引っ張られるとテコの原理で強い力がかかり、破損することがあります(特にステージ上の④)。
壁のジャックは壁内の湿気により接触面に酸化膜ができて接触が悪くなることがあります。特に長期の休暇で使っていないときに起こりがちです。ジャックを抜き差ししたり、グリグリ回転させて接点を磨くと良くなります。
⑥はアンプのマイク入力です。⑤と⑥をつなぐコードは両方がプラグになったもので、音効室にはいくつか予備があるはずですから交換して様子を見、あとでゆっくり切れていないかハンダ付け部分を確認します。
標準プラグと一芯のシールドコードとの接続図です。
延長コードと一芯のシールドコードとの接続図です。
壁の標準ジャックが壁内で一芯のシールドコードとどう接続されているかの図です。
プラグを外したときには芯線とシールドがショートするように作られています。原理図を示します
形状は様々なので一例を示します。
延長コードと一芯のシールドコードとの接続図です。
最後の③はクアッドケーブルにキャノンコネクタといいます。今回のトラブルは一本マイクということなので、クアッドケーブルの配線には触れません。ですが、コードとして異なるものを使っているということは意識してください。
一本マイクは本番のマイクが使用可能になるまでの間、片付けの間、そして突発的に必要になったときのためのマイクです。
本番のシステムについては気が向いたら書きますが、一応2番ホットを採用していることは書いておきます。